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系と施設の在り方等の検討 分子研リポート2005 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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5-6 系と施設の在り方等の検討

分子研の今後の進むべき方向とその受け皿となる研究体制(特に研究系及び施設の在り方)を探るために系・施設 の在り方等検討委員会が設置された。委員会メンバーは以下の8人である。

青野重利(岡崎統合バイオサイエンスセンター教授、相関領域研究系教授) 魚住泰広(分子スケールナノサイエンスセンター教授)

大森賢治(電子構造研究系教授) 川口博之(錯体化学実験施設助教授)

小杉信博(極端紫外光科学研究系教授、極端紫外光研究施設長、研究総主幹、委員会まとめ役) 中村敏和(分子集団研究系助教授)

松本吉泰(分子スケールナノサイエンスセンター教授、分子制御レーザー開発研究センター長、人事部会長) 森田明弘(計算分子科学研究系助教授、計算科学研究センター助教授)

4月15日(金),5月27日(金)にそれぞれ2時間強の時間を掛けて,各事項について現状と問題点を洗い出し,そ れらの改善に対する基本方針について議論した。その内容を報告書(案)にまとめ,6月17日(金)に所長参加のも と,さらに3時間以上かけて意見交換し,各事項について現状,基本提案,参考意見をまとめた。ここで報告するも のは2005年6月30日時点のものである。ただし,参考意見部分は,その後,所長が中心になって主幹施設長会議で他 の可能性を含めて具体化への議論を進めている内容を反映していないので,ここでは削除した。今後,教授会議等で も議論を行い,その結果,改組の必要が認められれば,平成19年度から実施に移す予定である。

5-6-1 研究系の在り方

(1) 現状

研究系については創設来,それぞれ長い歴史があり,主幹教授を中心に日本に於ける各研究分野を代表する研究が 推進されてきたが,今や,研究分野の広がりや複合化,複雑化によって,教授あるいは助教授の研究グループを単位 として4グループ程度でひとつの研究分野を構成できる状況ではなくなった。所内での研究系間の交流が盛んであれ ば,現状の組織でも問題はないが,実際のところは研究系間の交流は限定的でしかない。

以前は,研究所の重要事項については研究系が中心になって議論をまとめてきたが,その後,研究グループ数の増 加や研究施設の研究者の増加とともに,議論の単位に施設を含める必要が出てきた。主幹会議も主幹施設長会議となっ た。その結果,研究所としての意見の集約がなかなか難しくなっている。その一方で,岡崎3研究所の連携によって 発足した岡崎統合バイオサイエンスセンターに所属する分子研関係の研究グループは,分子研では分子構造,相関,ナ ノセンターに分散して併任しており,統合バイオ所属の分子研関係の研究グループの意見をボトムアップ的に集約し, それを分子研として議論することが困難な構図が続いている。

法人化後いろいろな雑務を行うことが多くなっている研究主幹は年功序列的に決められており,場合によっては自 分の所属する系とは異なる系の研究主幹を併任することさえある。また,法人化の影響により緊急事項や重要事項に ついては,主幹施設長会議とは別に,機動性のある執行部的な組織(所長,研究総主幹(評価担当),研究連携担当, 人事・広報担当)で議論することが多くなっており(以下では執行部と呼ぶ),系を単位としたボトムアップ的な運営 が必ずしも行われない場面が増えている。

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(2) 基本提案

以上の現状の問題点を改善するために以下のような基本的な方向性を本委員会では提案する。

①現在の研究系は廃止する。分子科学を広い視点で捉えることができるように分子研全体で研究領域(従来と違う意 味での“ 研究系” である)を3∼4に大きくまとめることが妥当であると考える。明大寺,山手両地区で研究領域を 分けるのではなく,両地区にまたがる研究領域を構成することで,日頃の交流を増やすことも盛り込む。

これによって,研究主幹(研究領域主幹)は3∼4人と少なくなるが,所長とともに研究所の重要事項を検討する 組織は現在の執行部の位置づけを考えれば3∼4人の研究主幹だけで構成しても問題ないであろう。むしろ,現執行 部はトップダウン的運営であるのに対し,新しい執行部ではそれぞれの研究領域(“ 研究系” )を実際,とりまとめて いる研究主幹が構成するので,自動的にボトムアップ的要素も盛り込むことが出来る。このような執行部構成にした 場合に,研究主幹に加えて,研究総主幹あるいは副所長が必要かどうかは,別途,その選考方法と位置づけから考え 直す必要がある(本委員会ではこの部分については議論せず)。

②研究領域(“ 研究系” )を構成する研究部門については,現在,1グループから3グループで1研究部門を構成して いるところを,できるだけ3グループ程度で1研究部門を構成するようにする。1研究部門に所属する教授グループ, 助教授グループの数は特に固定せず,必要に応じて教授1名+助教授2名,教授2名+助教授1名,教授3の構成が 選択できることとする。なお,1研究部門の基本は3グループとして,所長の判断で1グループを追加することも可 能とする。ただし,その部門で1グループが転出あるいは停年で解散したときは所長に1グループを返還し,基本の 3グループに戻すこととする。(所長の判断で,引き続き,1グループ追加されることも可能)

③各研究部門には部門長を置くようにする。研究所の雑務は研究主幹レベルではなく,部門長が分担するのがよいで あろう。施設長も部門長と同レベルに置くことになる。今の主幹施設長会議は部門長・施設長会議となる。運営会議 メンバーを構成する教授は,研究主幹以外は,教授会議で人事選考部会委員を選んでいる手順に従って部門長・施設 長から適任者を選ぶのがよいであろう。

④統合バイオ4グループは所内に対応研究部門(仮称:生命分子科学研究部門)を設置し,計算分子科学研究系(研 究部門)と同じような位置づけとする。

5-6-2 施設の在り方

(1) 現状

この30年を振り返ると,施設については研究系よりも組織の変化が激しい。特に後半の15年の間に本質的なところ での変化が起きている。分子研設立当初は研究者と技術者が同じ施設に属して共同利用業務に貢献してきたが,その 後,技術者だけで対応できる施設からは研究者がいなくなった。長期間,研究者が内部にいない状況が続くことで,研 究系との関係が希薄になって施設設備の更新や補充も滞る事態になった。一方,所外からの共同利用業務の負担の少 ない施設には研究系と変わらない研究グループ構成が採られるようになり,施設の共通装置の強化よりも,各研究グ ループの強化に重きが置かれるようになった結果,共通装置の維持更新の予算計画が利用する研究系(施設外)が関 われない形で遅延してしまうケースや,研究系(施設外)の研究者が共通装置の維持等に関わらざるを得ないケース

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が生じている。後者の方式は所外利用者が以前の支援を施設にお願いしようにも担当者がわからなくなるばかりでな く,研究者の異動とともに所内に担当者が誰もいない事態にもなる。さらに,共同利用に重要な中型機器を更新しよ うにも責任を持って対応する担当部署が施設に存在しない状況にもなりかねない。

(2) 基本提案

以上の現状の問題点を改善するために以下のような基本的な方向性を本委員会では提案する。

①共同利用機関としては施設利用と協力研究・課題研究の2本建てを堅持し,どちらか一方に偏らないバランスの取 れた運営が望まれる。施設利用は施設の高度な装置や高度な技術力を所内外に公開して分子科学研究の推進に貢献す るものである。施設利用者コミュニティや施設運営委員会を通じて所外の声を反映させながら,研究所として施設の 強化を図っていく必要がある。一方,協力研究・課題研究は各研究部門の研究者(施設に研究者を置く場合は施設の 研究者も含む)が主導的に所外の研究者と連携をとって必要に応じて関連施設も活用しながら対等に研究するもので ある。

②法人化後,新しい概念として出てきた研究機関同士の連携は,基本的には協力研究・課題研究的な考え方で関連研 究領域(“ 研究系” )が責任を持って取り組むものである。その際,個人ベースの協力研究・課題研究と違う側面が大 きいため,関連研究領域においては,できる限り,共通の研究資産である関連施設の高度な装置や高度な技術力を強 化・促進するようにし,長期的には施設利用を含めて広く分子科学コミュニティや周辺分野(連携分野)で優れた成 果を出せるように工夫するものとする。

③新しい研究領域(“ 研究系” )は,研究部門と関連施設から構成されている。同じ研究領域に属する各研究部門が積 極的に連携して施設を支援・強化することが望まれる。施設内に研究者を置く場合は,その研究領域に属する研究部 門の総意に基づくことを前提とする。施設は本来,所内研究者に異動があろうとも分子科学コミュニティ(所内を含 む)に対して高度な研究支援業務を継続的に行うところであり,それが構造的に難しくなっている施設はその施設が 属する研究領域(“ 研究系” )が中心になってその組織を早急に立て直す必要がある。各施設における専任研究職員の 増強についての意見は,定員を増やす方向ではなく原則的に同じ研究領域(“ 研究系” )の中での配置換えでの対応で 考える。

④上記提案のような同じ研究領域(“ 研究系” )の中の連携ばかりでなく,研究領域(“ 研究系” )を越えて分野横断的 に研究部門・研究施設(全部である必要はない)が連携して特定の研究を推進するための研究領域間連携組織を必要 に応じて構成できるようにする。時限は付けるが,評価によって延長は可能とする。現在の分子スケールナノサイエ ンスセンターは研究領域間連携組織の位置づけとなる。

⑤新機器センター(仮称)を設置する。研究所創設来,所内外の研究者の支援をしてきた施設の流れから見れば,ナ ノセンターは,極低温センター,化学試料室,機器センター(レーザーセンターが引き継いだもの以外の部分)の機 能を引き継ぐ立場にあるが,これら旧来の機能はナノセンター所属の研究者が進む方向とは必ずしも一致していない。 現在,ナノセンターでは弱体化しつつある極低温センター,化学試料室,機器センターの機能を新機器センターでは

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再び強化発展させるとともに,ナノサイエンス関係の共用装置や 920MHz NMR 装置を含めて所内外の共同利用を推進 していく組織にする。

⑥技術職員は高度な専門性と技術力を高めて高度な研究支援業務(分子研の特徴となるような高度な大型装置の維持 と高度化,高度な技術力を持った技術集団の養成と共同利用への貢献,所内研究者が進める高度な研究に対する支援 など)に貢献することが期待される。そのためには施設の設備を充実する一方,技術職員に対し,施設だけに閉じた 形ではなく,最先端の分子科学研究の現場で腕を磨く環境を与えることが重要である。研究職員側は最先端の分子科 学研究の現場を施設に置くか,研究部門に置くかについて,分子科学研究の将来動向も念頭に置きながら見極める必 要がある。

5-6-3 IMS フェロー制度

(1) 現状

最近は,IMSフェローは教授グループには1名が保証されている(ただし,外部資金等でポスドクを独自に雇うこと が出来る場合には所長が定めたルールに従って配分されないことがある)。また,1名保証ルールはないもののかなり の助教授にIMSフェロー1名の配分ができるように予算の運用を行い,毎年20名を越える採用が実現している。IMS フェローは,グループに依らず応募のあった候補者全体から所長が主幹会議に諮って選考するのではなく,まず所長 が10程度のグループにポストを配分し,そのグループリーダー自身の選考結果を尊重して決定することがほとんどで ある。前者の方式をとっていた15年以上前はポスト数も限られており,他に日本学術振興会奨励研究員の制度(現在 の特別研究員(PD)よりもはるかに狭き門)しかなかった時代であり,IMSフェローも狭き門であったし,分子研独 自のポスドク制度として知名度も高かった。

最近の方式は所内での競争もなく,教授・助教授全員にポストが許す限り,公平に配分されるように改善されてき ている。それに加え,現在,科研費を含む外部資金でIMSフェローと同じ雇用条件でのポスドクを自分の判断で雇う ことが始まっている。法人化後は,所長から配分される研究所の研究費で雇用することも事実上,可能である。さら にCRESTなどの外部資金でポスドクを雇用した場合の雇用条件は,IMSフェローより格段に優れたものになっている。 そのため,IMSフェローが外部資金を使った雇用条件の優れたポスドクと同じグループに属したときの待遇格差の問 題も指摘されるようになった。また,分子研外では,理化学研究所の基礎科学特別研究員等が端緒となって広がった スーパーポスドク的な制度も増えており,相対的にIMSフェローの魅力は薄れ,分子研の名だけで優れたIMSフェロー 候補を呼べる時代ではなくなっている。

(2) 基本提案

以上の現状の問題点を改善するために以下のような基本的な方向性を本委員会では提案する。

①新たな“IMSフェロー” 制度を開始する。人数を厳選し,雇用条件も優れ,若手人材源として所外の他制度との競 争力も持たせたものにする。昔のIMSフェローは任期途中でやめることを禁止していたが,この“IMSフェロー” で はそのような強制的なルールを適用しなくても定着率が向上するようなものに築き上げる必要がある。優れた雇用条 件にする方策として,定員外の年俸制で雇用する特任助手を“IMSフェロー” と呼ぶようにすることが考えられる。

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②現在の形のIMSフェロー制度は廃止する。現在のIMSフェローの雇用条件と同じ条件のポスドクは,所長から配分 される研究費(ポスドクの人件費・研究費に対する支援がある程度含まれているとする)や自分が取得した外部資金 によって,各リーダーの判断で自然科学研究機構で定めた雇用条件に従って,随時,雇用してよいものとする。この 方式のメリットは,各グループリーダーの判断で研究費を物件費に充てず人件費に使うことになるため,自律的傾向 が増すことである。なお,ひとつの予算枠で1年間雇用することが困難な状況も予想されるため,複数の財源を使っ てひとりのポスドクを採用できるように予算上の工夫が必須である。

5-6-4 助手制度

(1) 現状

分子研の助教授人事は競争も激しく,採用された人たちは滞ることなく,短い内に成果を挙げて,研究所が誇る高 い人事流動の源になっている。一方,教授の方はほとんど停年まで長期間,研究所で研究を続ける。数々の議論の後, 数年前に停年を60歳から65歳まで延ばしたが,そのこと自身は,直接,教授のアクティビティにつながる話ではない。 むしろ,この10年ほどの間に,助教授グループの構成は変わっていないが,新しく着任した教授のグループが小型化 してしまっており,事態は深刻である。具体的には,以前なら助手2名,研究技官1名の構成が取れるケースが多かっ たが,今は助手1名,IMSフェロー1名しか配分がない。その大きな原因は教授グループが9(助教授は3)も増え てしまったことにある。そのことは教授・助教授1グループあたりの研究費が減る原因にもなっている(所長はオー バーヘッドによって各研究者の研究費を減らさない努力をしているが,その一方でオーバーヘッドの犠牲になってい る部局がある事態も深刻である)。

国内における最近のポスドク制度の充実の裏に助手ポストの減少がある。分子研も改組要求の度に助手ポストが減 少してしまった。大学院を卒業した後,別の大学・研究機関で研究するチャンスを作るのにポスドク制度の充実は確 かに重要である。しかし,分子研のように外から来て,ある期間経ったら外に出ることを義務づけている場合の若手 育成策は,短期雇用のポスドクではなく,助手制度の充実の方にあると言える。その際,教授グループの果たす役割 は助教授より大きいと考えられる。

(2) 基本提案

以上の現状の問題点を改善するために以下のような基本的な方向性を本委員会では提案する。

教授には若い内から助手2名を配分する。そのための人件費・研究費の運用として約10年の間に増えてしまった研 究グループを減らすことを考えるべきである。5-6-1 で議論したように各研究部門(現在の系)をスリム化し,他の分 野と連携をとりやすくする形に移行することが望ましい。学問の動きを的確に捉えて分子研で花を咲かせて,それを 大学に伝えていくためには,流動がほとんどない教授の数よりも流動に貢献している助教授の数を相対的に増やすこ とが肝要である。

5-6-5 併任制度と客員制度

(1) 現状

これまで併任制度は,助教授が教授として転出した場合など,残務整理や任期途中の助手・IMSフェローのため,一 定期間(最大1年)転出者に対して運用されるケースだけであり,その他の運用については考えたことがなかった(岡

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崎共通研究施設との併任や総合研究大学院大学との併任は別として)。分子研の研究環境を生かした新しい分野を分子 研の専任として推進していただける教授を探しても見つからないことがある。分子研では教授に比較して助教授には そのような問題はない。かと言って客員制度による研究協力だけでは限界がある。

分子研には国内研究者と国外研究者を雇用できる客員制度がある。外国人の場合は最低でも3ヶ月間,研究所に滞 在して研究するため,専任に近い働きをすることが可能であり,分子研の名で論文も書く。ただし,教授会議メンバー ではない。一方,国内研究者の場合は自動的に教授会議メンバーとなるが,外国人と違って実質的に分子研で長期滞 在して研究を行っている人は例外的で,現在,先導分子科学研究部門の専任的客員教授1名だけである。教授会議に 占める客員の割合は 30% にも達している。本来は客員は国内外に関わらず,専任に近い扱いであった。そのため,研 究費に加えて,居室や実験室が与えられ,国内研究者については教授会議の構成メンバーまでなっていた。しかし今 は,実験室を持つ客員も減少し,教授会議の出席率も低くなってしまった。国内の客員の人が論文を書く場合に分子 研の客員として所属を書く人がどのくらいいるであろうか。A nnual R eview に客員の研究成果も記載されているが,著 者所属として分子研が明記されていない論文は本来は除外しないとおかしい。所長から配分される研究費が分子研所 属を論文で明記できない程度の話であるのなら予算配分の意味はない。

(2) 基本提案

以上の現状の問題点を改善するために以下のような基本的な方向性を本委員会では提案する。

①各研究領域(“ 研究系” )に定員を定めない客員研究部門(外国人客員部門や先導分子科学研究部門を含む)を置き, 同じ研究領域の専任研究部門及び施設で話し合って研究分野を定めて公募することとする。加えて,分子研に滞在し て独自の研究を展開する客員については分野を限らず公募する。いずれも,教授会議メンバーにふさわしい研究者が 選べるように,公募を厳選して実質的なものに改善すべきであり,現在の客員定員に縛られる必要は全くない。また, 法人化前の流動研究部門のように専任的客員部門としての運用は先導分子科学研究部門だけに限定せず,どの研究領 域の客員研究部門でも必要に応じて対応可能とする。

②他大学からの併任の充実を提案する。分子研の一員として優れた業績を挙げていただけるのであれば,専任教授に こだわりすぎて当該分野の人事選考を困難にしてしまう必要もない。現在,2年短期(1年のみ延長可能)の助手を 配分している先導分子科学研究部門客員教授に対する例外的措置は新たな併任制度と見なすことができる。しかし,こ こで提案しているのは,運用上は異なるもので,専任教授グループが教授の停年などで解散する際に後任教授ポスト を他大学の教授の併任で運用するという提案である(人件費削減の効果がある)。後任教授を公募する際に専任でも併 任でもよいとすることも考えられる。

5-6-6 分子研 O B とコミュニティ

(1) 現状

分子研で停年を迎える人は教授や一部の技術職員に限られており,それ以外の人にとって分子研は通過点でしかな い。この通過点を有意義に過ごせるように分子研はこれまで努力してきた。しかし,それだけでは分子研に対する帰 属意識は生まれない。この30年間,分子研を巣立っていった多くの人たちに分子研は何ができているだろうか。“ 卒業” 後も分子研が共同研究に貢献できれば問題ない。しかし,そのようなケースは一部の施設を除いて稀である。分子研

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の“ 卒業生” というだけでは分子研を支えるコミュニティの一員にはなり得ない(分子研に対して特別な思い入れの ある,現在,60歳を越える分子研創設に関わった人たちは例外的である。30周年記念に参加下さった顔ぶれを思い返 せばそのことがわかる)。“ 卒業生” を通じて若い世代が分子研に高い関心を持つことが最近,減っているように感じ る。また,聞くところによると総研大生は分子研の同窓生という意識を持たないように教育を受けているという。制 度上は確かにそうであり,また,自分の指導教員が分子研から転出したあとでは分子研が出身校という意識が消える のは仕方ないことかも知れない。流動性が高いための弱点とも言える。

ところで,創設来,分子研レターズという出版物を出版してきた。この出版物の主たる目的は共同利用・共同研究 に参加した研究者が所属している大学等への報告書である。研究所としてはコミュニティに配布するという意識で作 成してきたもののはずである。ところが,研究会報告など分子研レターズから消えてしまったものもあり,現在の分 子レターズを共同利用・共同研究の報告書に位置づけるには少々無理がある。その役目はホームページや分子研リポー トに部分的に移行している。分子研レターズには研究所の中の活動紹介もある。この場合,想定されている読者は主 に“ 在校生” である。必ずしも外向きではない。現在,分子研レターズは不完全ながら “ 卒業生” (客員を含む)にも 配布されており,想定されている読者に“ 卒業生” を含めているのかも知れない。しかし,転出時以外で“ 卒業生” に 積極的に執筆依頼しているわけではなく,総研大生やポスドクとして通過した“ 卒業生” に配布されているわけでも ない。

分子研を支える研究者コミュニティは創設期には分子科学研究会に限られていたが,今はもっと広く,いろいろな 研究分野集団が分子研と関わりを持っている。分子科学研究会と分子科学若手の会だけを分子研が研究会などでいつ までも支援するのは所内的にも変に思う人が増えている。分子研を知ってもらうには広く研究分野集団を見る必要が ある。分子研の内部の研究者はそれぞれ自分の関連する研究分野集団と関わっており,充分に分子研は貢献している という意見もある。また,活発な人事流動を通していろいろな研究分野集団と関わっているという意見もある。しか し,コミュニティの問題はそれだけで済ますわけにはいかない研究所の存在理由という大きな問題である。分子科学 研究会でさえも分子研との関わりは激減している。

(2) 基本提案

以上の現状の問題点を改善するために以下のような基本的な方向性を本委員会では提案する。

①組織として“ 卒業生” に対して何ができるかを考えた場合,そのひとつの案として分子研レターズという場を活用 することを提案する。これまでの分子研レターズの役割は分子研リポートに完全移行する。30周年の機会に同窓会を 作る話が所内外で出ているが,若い世代に対しては同窓会という入れ物は意味がない。むしろ,若い世代に分子研に 対する愛着を持ってもらうには,分子研の研究活動や今後の進んでいく道を“ 在校生” と“ 卒業生” が協力して伝え ることが重要である。分子研レターズの編集に教授と助教授ばかりでなく,助手以下の若い世代の人たちや“ 卒業生” を加えることも提案する。

②今は大学共同利用機関として分子研がいろいろな研究分野のコミュニティに果たす義務というものを改めて見直す 時期である。この観点では,所内的に分野横断的な情報交換が不足気味なのも是正する必要がある。予算がないとい うことで中止になってしまった岡崎コンファレンスなど,所外(特に若い世代)から見て分子研と関わりたいと思う ようなインセンティブを与えるものを“ 卒業生” を含む分子科学のコミュニティに対して絶えず提供できるように工 夫することを提案する。

参照

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